「和同開珎(わどうかいちん、またはわどうかいほう)」という言葉に、聞き覚えがある人も多いのではないでしょうか?
歴史の教科書でちらっとそんなこと書いてあったかも…。
なかにはこんな人も少なくないはず。
もし日本史が好きであれば、「発祥の地」というのはなんともたまらないロマンを感じますよね! 埼玉県は秩父(ちちぶ)にあるここ、「聖神社」は和同開珎に深くゆかりのある場所として人気の観光スポットです。
和同開珎とは?
「和同開珎(わどうかいちん・わどうかいほう)」とは、日本初(だったかもしれない)とされている流通通貨のことを指します。
なぜ(かもしれない)なのかは、のちほど説明しますね!
ワドウカイチンとワドウカイホウ
「和同開珎」という言葉には「ワドウカイチン」と「ワドウカイホウ」、2通りの読みかたがあります。
これはずっと長く論争が続いているところなので、簡単に説明します。
ワドウカイチン説
問題は最後の「珎」の文字。これが正式にどう読むのか、はっきりとしていないんですね。まず「チン」とする見方についてですが、「珎」という漢字の意味を調べてみると下記のように出てきます。
音読み:チン
意味:めずらしい。めったにない。たやすく手に入れられない。貴重な。思いがけない。(引用元:漢字辞典ONLINE「珎」)
このように、意味合いとしては現代でも馴染みのある漢字「珍」とほぼ同じ(珎は珍の異体字)ということで、「ワドウカイチン」と読ませるのはある意味当然といえます。
続いて、「ワドウカイホウ」説について。
ワドウカイホウ説
まず、この和同開珎という流通通貨は中国(当時の唐)の「開元通寳」を手本としています。これを見てわかるとおり、「寳(宝)」といういまいち日本では馴染みのない単語が使われていますね。
これは「貨幣」を意味する言葉で、中国で作られた貨幣はおおよそにして「寳」の文字が入っていることから「珎」は「寳」を簡略化した文字なのではないかと考える人もいるようです。
なお、現在は「和同開珎(わどうかいちん)」と呼ぶことのほうが一般的とのこと。
日本初の貨幣ではない!?
えっ!? でもさっき、日本初って言ったばかりでは!?
そんな声が聞こえてきそうですが、確かに和同開珎は「日本初の流通通貨」と考えられています。ただ、その前に貨幣がなかったのかというと、否。
もちろん、お金という概念がなかったころには物々交換で生計を立てていたかつての人々ですが、和同開珎以前にも貨幣と呼ばれる存在はありました。
それはなにか?
- 無文銀銭
- 富本銭
現在わかっているのは、この2つです。
ただ、なぜ日本初とカウントされていないのかというと、それは「流通通貨」ではなかったとされているから。流通通貨とはつまり、現代の人たちが日常的に使用しているお金のことです。
現在でもいまだ熱く論争が繰り広げられているのは特に「富本銭」のほう。
こちらは藤原京(694~710年)跡から発掘されたことにより、もしや和同開珎(708年発行)より古いのでは!? という意見もありますが、この富本銭がまじないや祈祷のために使われていたのか、それとも本当に実用的な貨幣として流通していたのかはいまだ謎が残るところであるため、「どちらにせよ、日本最古の“流通”通貨は和同開珎である」と見る人が多くいるのも確かです。
また、「無文銀銭」については流通貨幣ではなかったとされています。
貨幣が誕生するまでは当然物々交換が主流の世の中でしたが、無文銀銭もあくまでもそのひとつにしかすぎなかったとのこと。誰しもが持っているものではなかったんですね。
(情報元:和銅保勝会)
聖神社の基本情報+アクセス
24時間オープンですが、少し奥まった場所にある静かな神社ですので、あまり夜遅くに参拝するのはおすすめできません…。夜道には気をつけて!
アクセス
秩父という自然に囲まれた立地ということもあり、車で行くのがベスト。
ですがもし車が使えないという場合、秩父鉄道の「和銅黒谷駅」で下車すれば徒歩15分ほどで到着します。とはいえ、周りには徒歩で行けるような観光スポットはほぼないので、やはり車があるならそちらのほうをおすすめします。
ちなみに、車だと関越自動車道花園ICから約20分ほど。
もっと知りたい人は見学案内も!
聖神社を左手に通り過ぎると、和銅が採掘されたという露天掘跡「和銅遺跡」に続く道があります(車での乗り入れは禁止)。
「和同開珎」がたどった歴史や「和銅遺跡」についてより詳しく知りたい人は、公式ウェブサイトを確認するか、公式ウェブサイトから見学申し込みをすれば案内をしてもらうこともできます(5名以上、期間限定、有料)。
聖神社に寄り添うようにして置いてある「和同開珎」のモニュメント。階段を上った左手にはおみくじの箱が設置してあるので、その年の運勢を占ってみるのもいいですね!
ほんの小さな神社ですが、その雰囲気は神聖そのもの。
参拝して、そのままぼんやり時を過ごすのもおすすめです。駐車場は聖神社の階段を下りてすぐそばにあるので、足腰や体力に自信がない人でも大丈夫。秩父ならではの自然を感じながら、銭神様にお祈りをささげてみてはどうでしょうか?
日本史には欠かせない和同開珎
日本ではじめての流通通貨となったと言われている「和同開珎」。
朝廷に献上された和銅がここから採掘されたと考えると、そこはかとないロマンを感じますよね。なお、和同開珎が流通通貨となったことで元号も「慶雲」(704~707)から「和銅」(708~714)へと改元されています。
いまは一世一元が基本ですが、昔は「奇妙な柄の亀が見つかった!」とか、そんな理由で改元されることもあったんですよ!
もう「ダサイタマ」とは言わせない! 日本の歴史に興味がある人にとっては欠かせない、埼玉県屈指の人気観光スポットのひとつです。