筆記試験やグループディスカッション、面接などを乗り越えて、新入社員(または中途社員)が入ってくる新たな出会いの季節。
「おめでとう!」と心から喜べればいいですが、迎える側からしたらこれから待ち受ける怒涛の日々に多少の緊張を強いられている人も多いのではないでしょうか?
特にやる気は申し分ないのにどうしても仕事が身に付かない部下や後輩を持ってしまったとき、なかなか意図したことが伝わらない苛立ちをぶつけてしまっている人も少なくないはず。
新しく入社してくる人の数が多ければ多いほどひとりやふたりいるそんな人材ですが、ただ不平不満を感じて八つ当たりまがいの怒り方をするのではなく、ある程度の心構えを持って接するようにしましょう。
今回は、そんな新入社員(中途社員)に対する心構えと仕事を円滑に進めるうえでのポイントについてお話します。
仕事ができない人は一定数いる
ここでは「仕事ができない=正確に意図が伝わらない、効率が悪い、ケアレスミスが多い」と定義します。でも、こんな人って職場にひとりやふたりいるものですよね。
ミスは誰しもが経験すること。それでも、毎日のように繰り返されると大事な仕事を任せるのが心配になるのも当然です。そんなときにどんな心構えを持って注意したらいいか、個人の体験を踏まえて紹介していきます!
「だろう運転」じゃなく「かもしれない運転」で考える
ここ数年のうちに自動車の教習所に通った人は、聞いたことがあるのではないでしょうか?
運転する際は、「人なんて出てこないだろう」ではなく「人が飛び出してくるかもしれない」という考え方で辺りを警戒する。
これです。
仕事ができない(苦手な)人を相手にしているとすでにわかっている場合、「これぐらい言えばできるだろう」ではなく「これでもまだできないかもしれない」という風に思考をチェンジします。
仕事ができないという事実の裏側には、本人の理解力が乏しいということ以外に、伝える側の言葉が足りていないということがあります。本人に伝わっていなければ、それは十分な説明をしたということにはならないのです。
この世には、1だけ伝えれば10できる人もいれば、1~10どころか12まで伝えないとできない人もいます。
前者であることが望ましいのはもちろんですが、なかなかそううまくもいかないですよね。
例えば筆者(@MochaConnext)の前職での話です。圧倒的に仕事が苦手な人がいたので、データ入力だけをお願いするために営業資料を渡して、こう言いました。
これ、システムに入力しておいていただけますか?
入力するだけ。そう思っていたのです。
自分でやれば30分ほどで終わるものですが、1時間、2時間と待っても依然戻ってきません。そのうち先方との打ち合わせで外出し、帰社後の就業時間ギリギリに聞きに行ってみると、ようやく半分ほど終わったとのことでした。
でも、まあ、しょうがない。終わったところだけでも、とパソコンを覗き込んで、ぎゃあああああああ!
その営業資料には何日までにシステムに入力しなければいけないという入力期限を書いておいたのですが、明日でいいものと、今日中にやらなければいけないもの、2種類あったのです。
もう、おわかりですね…。
明日でいいものから先にやっている!!!
確かにこれは筆者のミスでもあったのですが、明日でいいものを上半分に、今日中にやらなければいけないものを下半分に分けていたのです。
もちろん、資料を手渡すときに「入力期限があるから気を付けてくださいね」とは伝えています。でも、本人からすれば上から順に、几帳面な方法でやっただけにしかすぎません。
つまり、本来正しかったのは、
上半分に期限が短いものを持ってきてあげる、もしくは、期限が迫っている緊急案件は下半分だからどこからどこまでを先にやるように伝える(できれば「ここからここまで」と印を付けてあげられるとなお良し)。
ということだったのです。
なお、こういった場合は「してはいけないこと」よりも「してほしいこと」を明確にしておくと、やり取りが円滑に進む傾向にあります。
褒めて褒めて褒めまくる!(そして伸ばす)
一概にこうとは言い切れませんが、日本の教育上ありがちなのは「Aさんは〇〇が苦手で、Bさんは××が苦手。だからAさんには〇〇を、Bさんには××を任せましょう」という苦手克服方式。
対して海外でよくあるのは「〇〇が得意なAさんには〇〇を、××が得意なBさんには××を任せましょう」という得意なものを伸ばしていく方式です。
仕事をするうえでこうすると、教える側と教わる側、指示する側と指示される側、両方の負担を軽減することができます。
もしかしたら「この人、仕事できないなあ…」と思っている人でも、いろいろチャレンジしてもらっているうちにほかの人より特出した得意分野が見つかるかもしれませんよ!
ひとつでもできそうな部分を見つけたら、とにかく褒めて褒めて褒めまくりましょう! 自分自身で仕事ができないと感じている人は、怒られたり叱られることで委縮してしまってより多くのミスを発生させてしまうことがあるので、褒めるだけで意外と状況は変わるかも?
適材適所でやってもらう
もしなにを試しても、なにをやってもらっても駄目だったときには、適材適所で人材配置をするのが一番。もしすでに相手との関係が悪くなってしまっている場合、なかなか良いところを見つけるのは難しいかもしれませんが、大丈夫。
誰にでも、できること、良いところがひとつはあるものです!
- メモを取るように言う。
- 人の目を見て話す。
- 電話が鳴ったら出る。(そしてそんな風に対応するか伝える)
- 人を見て覚えろというような発言はしない。
- どんな状況でも、話を聞いてあげる。
- 悪いところがあれば注意はするが、注意した意図まで伝える。(例:ここでミスが起きると何に影響するのか、そしてそうなると誰に迷惑がかかるか等)
仕事に苦手意識を持っている人というのは、他人の目が気になる人、真面目すぎて言われたこと全部に耳を傾けようとする人、緊張のあまり動けなくなってしまう人など、いろいろいます。
ここまで伝えてもなおミスを連発する場合は、一緒に対処法を考えてあげるなどの方法が必要です。
社会人なのにここまでする必要はあるのか?
学生時代も終わり、社会人になるということは自分でお金を稼ぎ生計を成り立たせるということ。そんな人相手に、部下や後輩とはいえどもここまでやる必要はあるのか?
答えはYESです。
その理由は、下記3つだと考えます。
互いにWIN-WINな関係が築ける
ほとんど毎日のように顔を合わせる以上、互いに嫌な思いはしたくないもの。もし上記点を気を付ける、もしくは一緒に対処法を考えるだけで少しでも円滑に業務が進むなら、それに越したことはないと思いませんか?
こちらは前職で筆者(@MochaConnext)が上司に言われたことです(例のブラック企業)。
苦手だと感じた相手ほどグッと近寄って、懐に潜り込め!
ブラック体質すぎる企業に勤めたこと自体は残念ですが、この言葉だけは今でも胸に残り続けています。仕事は慈善事業ではありません。だからといって、100パーセント実力主義というわけでもない。
互いに感情を持った人間ですから、仲良くしてもらえたらうれしいし、その人のために頑張ろう! もっとできることを増やそう! と思えるものです。
意思の疎通が図れるだけで、その人に対する苛立ちがなくなるどころか、相手の気分も落ち着いてケアレスミスが減るとしたらどうでしょう? それでもそこまでやる価値はありませんか?
長期的目線で見るとメリットのほうが多い
では、ミス続きの部下や後輩を放置しておくことで、職場の雰囲気が悪くなったとします。小さなミスは放っておくといずれ取り返しのつかないことになる恐れがありますから、そうなるのも当然といえば当然ですよね。
相手が図太い人間ならまだしも、もし与えられた業務が苦手というだけで繊細な人であった場合、入社して間もなく退職という道を選んでしまう人もいるでしょう。
そうすれば、穴が空いたポジションのために再度人材を募集しなければなりません。そして、また一からの教育。その人だって必ずしも仕事ができるとは限らないのです。
そんなことを繰り返していれば、会社側はいいとしても、徐々に疲弊してしまうのは教育する側の人間。それならば、最初に雇用した人を少しずつ成長させてあげたほうが時間的にも精神的にも随分と楽なはずです。
数年後にはもしかしたら、「あんなこともあったよな」「お前、こんなミスしたよな」と笑い話になっているかもしれませんね!
実は本人が一番つらい
ミスをすれば怒られる。これは社会人として当然の結果です。
注意する側も言い方を考えたり、指導方法を考え巡らせたりと最初の頃は体力の消耗が激しいはず。でも実は、怒られている本人が一番つらいのです。
ミスは起こしたくて起こすわけではありません。ましてや、人に迷惑をかけたい人間などどこにもいません。
ふとした拍子にミスが起きてしまった場合には、そこで突き放すのではなく、むしろ寄り添ってあげることのほうが何十倍も大事。
「なんでミスをしたんだ!」という一方的な怒鳴り方では、本人も「なんでだろう?」と思うだけです。そうではなく、「なぜミスをしたのかわかる?」と一緒に考えてあげる姿勢を見せるだけでも、印象は大分変わります。
ミス⇒指導
と、この中心に、「一緒に考える時間」を少しでもいいから作ってあげてくださいね。
みんなで楽しく働けるのが一番!
仕事とはいえ、楽しいのが一番。
上記でお伝えしたポイントはこちらです。
POINT
- だろう運転ではなく、かもしれない運転で様子を見ながら指導する
- やってはいけないことではなく、やってほしいことを明確に伝える
- ひとつでもできることがあれば、褒めちぎって長所を伸ばす
- ミスが起きたときには、一緒に対処法を考える
- 適材適所で人材配置をする(人には向き不向きがある)
- ミス⇒一緒に考える⇒指導(本人にも考えさせる)
入社してきた新人に日々苛立ちともどかしさを感じている人は、相手もふざけているわけではないということを意識しながら指導に当たるとより良いでしょう。
毎日ワクワクしながら職場に通えるなんて、それだけで満員電車の疲労も吹き飛ぶぐらいハッピーなことですよね!