「ウェルテル効果」という言葉を聞いたことはありますか?
これは18~19世紀に活躍したドイツ人作家・ゲーテが書いた「若きウェルテルの悩み」に由来する社会的現象のひとつです。
日本だけならず、世界でもたびたび起こる現象について、少しだけ考えてみたいと思います。
✔ ウェルテル効果とは
✔ 「若きウェルテルの悩み(ゲーテ著)」の考察
✔ ウェルテル効果と若きウェルテルの悩み
✔ この機会に考えてみたいこと
ウェルテル効果とは
「ウェルテル効果」。
それは、ドイツ人作家(詩人)であるヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの代表作「若きウェルテルの悩み」に由来する社会的現象です。
簡単に言えば、著名人や社会的に知名度の高い人間が自ら命を絶つと、そのあとを追う人が増える現象のこと。
ところで、先日別サイトで紹介した記事でも書いたとおり、ゲーテはじつに陽気で明るい性格の持ち主でした。>>>巨人同士の対談「希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話」(頭木弘樹編訳)のあらすじ&ネタバレなし感想
それでは彼の作品がすべて楽しく愉快なものであったかというと、そうではありません。それこそ「若きウェルテルの悩み」は、他の作家だけでなく社会にさえ影響を与えるほどの衝撃作でした。
主人公の青年・ウェルテル(ウェルテルといえば映画作品「告白」に出てくる教師も同じあだ名!)が、婚約者を持つ女性・シャルロッテ(ロッテ)に恋をして、叶わなかったことから自ら命を絶つところまでを描いた悲恋ものの作品です。>>>【ネタバレなし】「告白」衝撃作!「私の娘が…」教室を中心に無邪気な悪が渦巻いていく【R15+】
これ、じつはゲーテ本人の体験談がもとになった話なんですね。
だからこそリアルで、かつ共感を得ることが多かったのかもしれません。
さて、これがなぜ「ウェルテル効果」と呼ばれるようになったかというと、この作品が発表されたあとにウェルテルを真似て自ら命を絶つ人が増えたからです。そんなことから、ヨーロッパの中には発行禁止にする国も多かったそう。
ひぇ……! すごい影響力……!
「若きウェルテルの悩み」のテーマ
ここでは「若きウェルテルの悩み」に関する、簡単な考察をしていきます。かなり個人的な所感になっていますので、あしからず。
先述したとおり、世界的ベストセラーとなった「若きウェルテルの悩み」の中では、婚約者がいるシャルロッテ(ロッテ)に恋する青年・ウェルテルが絶望のうちに自ら命を絶つところまでが描かれています。
これだけを聞くとどうしても単なる王道の悲恋ストーリーかと思いがちですが、じつのところ、ウェルテルの悩みは「叶わない恋」ではなかったように思うのです。それというのも、「若きウェルテルの悩み」の序盤でウェルテルは「自ら命を絶った幼馴染み」について語っています。
つまりウェルテルにとって死は人より少し身近なものであり、常に頭の中のどこかにその言葉があったはずなんです。
だからあくまでも「叶わない恋」は最後の一押しであった。それよりもむしろ、彼をむしばんでいったのは「自分自身に対する絶望感」や「孤独」だったように思えます。
若きウェルテルの悩みから考えるウェルテル効果
アメリカの社会学者、デイビッド・フィリップス(David Phillips)氏がニューヨーク・タイムズ紙で公開された情報(記事)をもとに調査したところ、著名人の自殺報道が多ければ多いほど、自殺率も上がっていたそうです。
そんなことがあり、この社会的現象は「若きウェルテルの悩み」にあやかって「ウェルテル効果」と名付けられました。
もはや「若きウェルテルの悩み」の内容自体にはほぼ関係ありませんが、ウェルテル効果というのは日本にもたしかに存在するようです。
でもこれだって、突然「著名人の死に感化されたから自分も……」とはなかなかなりませんよね。きっとウェルテル同様、もともといろいろな悩みを複合的に持っていた人にとっての最後の一押しになってしまうというパターンが多いのではないでしょうか。
感受性が強ければ強いほど、ある意味で影響を受けてしまいそうな話です。
大事なのは客観性と鈍感力
現代社会において、悩みがひとつもないという人はほとんどいないでしょう。むしろ、ストレスがゼロ――少なくとも、そう感じている人――というのは逆に危ない状態でもあります。
発作的にふと、頭の中でなにか良からぬものがよぎったとき。
ちょっと客観的に自分を見つめ直してみる。ちょっとまわりの、あるいは自分の気持ちに鈍感になってみる。
そのちょっとした積み重ねが、ウェルテル効果を引き起こさないためには重要なのかもしれませんね。
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※本記事の情報は2020年7月時点のものです。
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