世の中には思っている以上に、たくさんの職業が存在しています。
ブロガーやライター、YouTuberはもちろん、営業やマーケター、編集、デザイナー、公務員、スポーツ選手といったオーソドックスな職業はいくらでも思い浮かべられるかもしれませんが、その中で「日本語教師」と答える人はどれだけいるでしょうか?
少なくとも、子どものころはそんな職業があること自体知らないかもしれませんね。
さて、なぜこんな話をしはじめたのかというと、筆者(@MochaConnext)が日本語教育能力検定試験に合格しているからという、極めて個人的な理由です。
でも、これから転職を考えている人、就職先を探している人に、こんな選択肢があるんだよということも知ってほしい。ということで、本記事では日本語教師という職業と、必要な資格などについてお話していきます。
✔ 日本語教師の仕事内容
✔ 日本語教育能力検定試験について
✔ 日本語教師に必要な資格
✔ 向いている人/向いていない人
✔ おすすめの勉強方法
✔ 転職したい人に向けて
日本語教師について
「日本語を教える教師」ということはわかるけれど、そもそも誰に対して教えるの? 学校の国語教師とは違うの? という基本中の基本から、お伝えしていきます。
日本語教師の仕事内容
日本語教師の仕事内容を端的に言い表すと、「外国人(正確には日本語が母語でない人)に日本語を教える仕事」です。といっても、なんだか漠然としていますよね。
えーと……そもそも、国語の先生とは違うの?
国語教師が中学校や高校で日本人(日本語を母語とする人)に国語として日本語を教えるのに対し、日本語教師は外国人(日本語を母語としない人)に日本語の文法や会話、発音、文化、習慣などを教えることになります。
学生の日本語レベルは初級~上級までとクラスによってさまざま。また、国籍はもちろんですが、主婦やビジネスマン、日本の大学や専門学校に進学したい人など、日本語学校に通う人もいろいろです。
中には日本文化に興味があるから、単純に日本語を話せるようになりたいからというように、日本人が海外に語学留学をするのと同じ感覚の人も大勢います。
世界各国で日本語教師の需要があるので、日本だけでなく、海外生活に興味がある人にもおすすめ。
必要な資格(これから変わるかも)
日本語教師というと、民間企業への就職とは少し違ったプロセスが必要なんだろうなということは、なんとなく想像が付くかもしれませんね。
まず、現場で教えたいという人が進むべき道は2つ。
《流れ》
✔ 養成講座を420時間以上受講する
✔ 日本語教育能力検定試験を受ける(合否が出る)
✔ 教育実習
②独学、または通信:
《流れ》
✔ 日本語教育能力検定試験を受ける(合否が出る)
養成学校に通うとザッと10万円以上はするため、「なら独学のほうが絶対良いじゃん!」と考える人もいるでしょう。ただし、日本語教師には基本、即戦力が求められます。座学に加えて、教育実習や模擬授業なんかがあるのは養成講座を受講するメリットといえるでしょう。
なお、2020年以降どこかのタイミングで、民間試験だったこの日本語教育能力検定試験が「国家試験」として生まれ変わります。そうなると、上記要項にプラスして4大卒という条件が加わってくるので要注意。もちろん、教育実習も修了しなければなりません。
ということは、国家試験になってしまうと独学では日本語教師になれないということになりますね。
※国家試験に移行する正確な時期は明言されていないので、情報はこまめにチェックしておくようにしましょう。
日本語教育能力検定試験について
養成講座に10万以上? だったら国家試験になる前にさっさと独学して検定に合格しちゃお!
一瞬でもこんな風に考えてしまった人は、少し立ち止まって冷静になりましょう。
民間試験といえば英検や漢検、秘書検定、TOEICなどの試験を思い浮かべるかもしれませんが、日本語教育能力検定試験の一般合格率は例年20%前後。※試験日程は10月(2020年の申し込み期間は7月20日~8月3日)
付け焼刃で受かるほど甘い試験ではないんですね。単に日本語が話せればいい、というわけではありません。試験の内容は下記のとおり。
✔ 社会・文化・地域
⇒ 世界と日本/異文化接触/日本語教育の歴史と現状/日本語教員の資質・能力
✔ 言語と社会
⇒ 言語と社会の関係/言語使用と社会/異文化コミュニケーションと社会
✔ 言語と心理
⇒ 言語理解の過程/言語習得・発達/異文化理解と心理
✔ 言語と教育
⇒ 言語教育法・実習/異文化教育・コミュニケーション能力/言語教育と情報
✔ 言語一般
⇒ 言語の構造一般/日本語の構造/コミュニケーション能力
この中から出題される質問にマークシート形式(+筆記)で答えていくわけですが、それでさえ合格率が20%前後になってしまうということは本腰を入れて勉強する必要がありそうですね(近年では徐々に合格率が上がっています)。
なお、試験は一日がかりで行われるので集中力は必須です。
わたしは会場が東京大学だったので、無意味に緊張してしまいました!(笑)
ここでひとつだけ補足説明をしておきます。現段階(民間試験の段階)では、検定試験に合格していない人でも即戦力になれる人材、経験豊富な人材であれば日本語教師になることはできます。ただし、即戦力になれる検定試験に合格した人が隣に並んでいた場合、不利になってしまう可能性があるということは念頭に置いておきましょう。
例えばどんな問題が出るの?
上記のように出題範囲を説明したところで、いまいちイメージは湧かないかもしれませんね。それではいくつか、難易度が低いとされている問題を引用します。
問1 中間言語の特徴について適当でないものを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 中間言語の発達過程ではU字型の発達曲線を描く現象が見られることがある。
2 中間言語とは、まだ発達途上で誤用を多く含んだ言語体系のことである。
3 中間言語の考え方では、中間言語を自律的な言語体系と考える。
4 中間言語の発達は、途中で止まってしまうこともある。
《答》2(引用元:平成24年度 日本語教育能力検定試験 合格するための本 P090)
!?!?
問3 コミュニカティブ・アプローチに直接的に影響を与えたものとして最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 第二言語習得理論 2 生成文法理論
3 行動主義心理学 4 機能主義言語学
《答》4(引用元:平成22年度 社団法人日本語教育学会認定 日本語教育能力検定試験 試験問題 P24)
問3 ナチュラル・アプローチの理論的背景となった、モニターモデルの仮説として不適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 自然習得順序仮説 2 インプット仮説
3 情意フィルター仮説 4 インターフェイス仮説
《答》4(引用元:平成23年度 社団法人日本語教育学会認定 日本語教育能力検定試験 試験問題 P22)
ちょ、ちょっとなに言ってるかわかんない……。
あくまでも、これらは難易度がやや低めの問題。日本語教師は日本語が話せればいいというだけでなく、歴史や社会学、言語学、ときに音声学まで関わってくる、幅広い知識が必要とされる職業なんですね。
だからわたしはこの絵を描くのがめちゃくちゃうまい!(※音声学で使う)
なお、マークシートが終わったら筆記(記述式)試験もあります。
日本語学校に就職するためには
日本の民間企業に新卒で就職しようと思うと、就活の時期というのがありますよね。
でも、日本語教師として就職活動に臨もうとする場合は少し違います。というのも、日本語学校が取り入れているのは、空き採用だから。
一般的には、養成講座が修了する2~3カ月ほど前からはじめるといいと言われています。筆者(@MochaConnext)は専門学校でこれを学んだのですが、民間企業に内定をもらった筆者と違い、クラスメイトの中には卒業式時点でまだ就職先が決まっていないという人も間々いました。
就職活動の流れとしては、大まかにこんな感じ。
✔ 学校見学
⇒ 学校によってかなり雰囲気や毛色が異なるので、自分に合う合わないを見極める能力は非常に大事!
✔ 履歴書(および職務経歴書)
✔ 面接
✔ 模擬授業(実際の先生方を前にして実践形式の授業を行う)
空き採用ということはどういうことか。それは、新卒・中途関係なく、ライバルたちと対等に渡り合わなければならないということ!
これはとても大変なことです。だって中には、定年まで学校で国語教師をしていたような人と戦わなければならないケースもあるということですからね。ゆえに本来は、養成講座に通っていたほうが安心といえば安心でしょう。
おすすめの勉強方法
おすすめの勉強法と聞いて、期待してしまった人は正直に挙手!
がっかりさせるようで申し訳ありませんが、正直に言うと、そんなものはありません。できることといえば、とりあえず過去問を解きまくる。解いて解いて解きまくる。それだけです。
あとは、必要な専門用語を身に付けておく。
地道ですが、この作業なくして日本語教師への道はありません。
今すぐ転職したい?でも辞められないなら……
現代の日本には、今自分の置かれている状況に苦しんでいるけれど抜け出せない、という人が多く存在しています。>>>【体験談】もしもブラック企業に入社してしまったら?「逃げる」こともまた強さ【メンタルヘルス】
「会社をすぐに辞める」=「恥ずかしいこと」「悪いこと」
このような風潮は近年になってようやく薄れてきつつあるものの、どこの会社でも適用されるものではありませんよね。でも、心がつらいときは無理しすぎないでほしい。それで体を壊してしまっては、元も子もないからです。
もし会社が辞めさせてくれない、上司や先輩に怒鳴られるのが怖くて話が切り出せない、そんな人がいれば、退職代行サービスを利用してみるのもおすすめです。
これに関しては賛否両論さまざまでしょうが、人間、もう踏ん張れないほどつらいときはあるもの。退職代行サービスなら、「辞めたい」のたった4文字を呑み込んで生きている人たちの助けになること間違いなしです。
>>>東京都労働委員会認証の合同労働組合【退職代行ガーディアン】
※退職代行サービス利用に関する是非について、ここでは議論しません。
海外志向の人こそ日本(日本語)について知っておくべき
海外志向の人の中には、海外しか視野に入っていない人が多く見受けられます。
もちろん、海外移住や海外生活というのは生半可な覚悟でできるものではありません。社会人になれば、仕事や友達、家族を置いていくわけですからなおさらです。
でも、海外志向の人にこそ日本のことをよく知っておいてもらいたい。
海外に出た瞬間、誰しもが「日本人代表」になります。周囲に不快感を与える言動をすれば日本人のイメージを台無しにしてしまうかもしれないし、日本のことを知らなければ「日本人は自分の国のことなのになにも知らないんだな」とガッカリされてしまうかもしれません。
日本語教師のための勉強するというのは、正しい日本語の再習得をはじめ、歴史や現状についての理解を深められる良い機会でもあるということです。
ただし、言葉は生き物。日々移ろいゆくものです。正しい日本語を知ったからといって、それが必ずしも「読みやすい日本語」であるとは限りませんので、あしからず。
※本記事の情報は2020年6月時点のものです。
複数ブログ運営中! Twitterでは随時ブログ情報を更新していますので、よろしければフォローお願いします♡
参考文献:
– キャリアガーデン「日本語教師の仕事内容」
– KEC日本語学院「日本語教師になるには」
– jegs「日本語教師の資格を安い費用順に比較」
– 私は日本語教師になる!「【2020年2月最新】国家資格になるのはいつから?日本語教師資格を取るのはいつがいいの?」
– JEES「日本語教育能力検定試験」
– NJ 日本語ジャーナル「すぐわかる 日本語教師の国家資格化について」
– 日本語教師ナビ「日本語教育能力検定試験とは?」
– 日本語教師ナビ「日本語教師の就職活動は他業界とどう違う?面接や模擬授業の心構え」